vol.6
鮎釣り名人 室田正さんの
「飛騨清流 みやがわ鮎」
鮎釣り界のレジェンドとして知られる室田正さんが飛騨市を終の住処と定めたのは、「飛騨清流みやがわ鮎」、別名「あばれ鮎」に惚れ込んだからです。 飛騨市の森林の大部分を占める豊かな落葉樹の森林。雪解け水はその葉が堆積してできたふかふかの土に濾過され、宮川へと注ぎます。宮川の清流に揉まれ、きれいな純水が育む藻を食べて、たくましく成長するのが「飛騨清流みやがわ鮎」です。 室田さんが驚いたのは、その力強さ。大きいもので25cmを超える体格のよさに加えて、“引き”が非常に強く、これまでに何度も竿を折られました。室田さんは釣った鮎を生簀で数日間飼い、泥を吐かせてから氷で締めて出荷。「最高にうまい!」と自負するあばれ鮎を最高の状態で食べてもらうため、室田さんは釣り上げた後の管理にも余念がありません。
室田正さんの「飛騨清流 みやがわ鮎」 + EIRYO
初夏の味覚の代表である鮎は「香魚」とも書くように、清涼感のある独特な香りが特徴です。一般的な鮎なら塩焼きという選択肢もありますが、身が締まり、ボリュームのある「飛騨清流みやがわ鮎」を丸ごと味わっていただくために、私は天ぷらと骨せんべいに仕立てています。 鮎を調理する際に大切なのは、下拵えです。まず、包丁の峰や鱗掻きを使って鱗とぬめりを除いた後、流水でよく洗います。ぬめりが少しでも残ると生臭くなり、香りの魚らしい爽やかさが失われるからです。続いて、はらわたを除き、三枚に下ろします。このとき、背骨と頭を切り離さないように注意します。頭と背骨には塩を振って軽く脱水した後、ペーパータオルで水分をとって揚げ油へ。最初は泡がすさまじい勢いで出ますが、10分から15分ほどたつと小さくなり、鍋の中が静かになってきます。骨に含まれる水分が減ってきた合図です。そうなりましたら引き上げ、油を切るとカリカリの骨せんべいができあがります。 身を揚げるのには、さほど時間がかかりませんが、揚げる前に欠かせない準備があります。それは、首に近い方の腹骨を2、3本抜いておくことです。「お客様に、骨などをお口から出すような煩わしいことをさせてはならない」。これは日本料理店での修行時代に、私が先輩たちから厳しく仕込まれたことの一つです。身をふっくらと揚げたら、骨せんべいや季節の野菜とともに盛り付け、塩と「飛騨山椒」を添えてお持ちします。山椒は今、フランスをはじめ世界中でブームとなっている食材。料理人も愛用していますが、チョコレートのフレーバーとして採用するパティシエも多いようです。なかでも飛騨地方の山椒は、柑橘系の澄んだ香り成分が多いのが特徴で、料理のプロからも大人気。その山椒と同じ土地で生まれた「飛騨清流みやがわ鮎」との相性は抜群で、塩とともに振りかけ、召し上がっていただくと鮮烈な香りがふわっと広がり、非常にリッチな味わいとなります。
飛騨清流みやがわ鮎の姿揚げ 初夏の飛騨野菜の彩り添え
工藤英良(左) と 室田正さん(右)
+EIRYO vol.6
2024年5月6日発行
ご協力 : 室田 正 様
発行人 : 工藤英良
写真 : 竹見脩吾
デザイン : 水口麟太郎, 福井 厚
編集・文 : 市原 淳子
発行 株式会社EIRYO
東京都大田区田園調布5-56-4
TEL.03-6822-2274
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